木、杉粉そのものを溶解し作った100%天然バイオマス組成の熱可塑性樹脂材料

100%天然バイオマス系生分解性プラスチック

環境・エネルギー分野向け最先端材料を研究しているGSアライアンス株式会社(所在地:兵庫県、代表取締役:森 良平 博士(工学))が、天然深共晶溶媒を用いて、木と石そのものから作った100%天然バイオマス系生分解性プラスチックを開発。世界で初めての取り組みで、脱炭素、カーボンニュートラル社会の構築を目指している。

生態系を破壊する従来のプラスチック

人口爆発に伴う地球温暖化、環境汚染や森林破壊などの環境問題は深刻な問題であり、プラスチック汚染も生態系を破壊する壊滅的なレベルになりつつある。2050年には海中に漂うプラスチックゴミの量が魚の量を上回る可能性があり、既に我々人体にマイクロプラスチック、大気中からナノプラスチックが入りつつあるという報告もあるという。

生分解性プラスチックの現状

プラスチックは厳密には熱可塑性樹脂と呼ばれ、熱で溶かし、溶解した状態で成形機にかけ、様々な形に成形されて製品となる。つまり、熱をかけて、様々な形に成形できることがプラスチック(熱可塑性樹脂)の定義で、成形前は、「樹脂ペレット」と呼ばれる1-数ミリメートルの粒状の状態だ。最近は様々な生分解性プラスチックが国内外の企業で生産され、少しずつ実用化も始まっているが、まだまだ石油由来で生分解性しないプラスチックが大半で、プラスチック汚染は日々進行している。生分解性プラスチックは石油のほかトウモロコシ・サトウキビなどのバイオマスからも作られるが、これは人間の食糧と拮抗するという問題も。人間の食糧と拮抗しない理想のバイオマスとしてはセルロースがあるものの、石油由来の添加剤が不可欠、など課題も多い。

GSアライアンスの森 良平博士(工学)は同社で開発している深共晶溶媒の中でも特に100%天然組成の天然深共晶溶媒を用いて、「木」そのものから熱可塑性材料を開発。木や植物は主に「セルロース」「リグニン」「ヘミセルロース」の3成分から構成されており、深共晶溶媒によりこれらの成分を膨潤、微分散、溶解させ、加工して、熱可塑性材料化することに成功。同様の方法で、木を含めたあらゆる地球上の植物、廃木材、廃植物、海藻、廃紙、パルプなどの天然有機資源を原料とすることが可能という。以前にも深共晶溶媒を用いて、木から樹脂のようなものを作る研究は海外の大学で報告されていたが、押出機で成形できるような熱可塑性のものまではできておらず、今回のように深共晶溶媒で処理した木材をタルクなどの石由来の材料と複合化し、二軸押出機で加工して、熱可塑性樹脂状のペレットにし、熱可塑性樹脂として開発したのは世界初だという。

環境に優しいプラスチックの誕生

木や石以外の、天然深共晶溶媒を含めた他の成分も、環境に優しい、既に人間社会にありふれている成分を原料としている。石油由来の材料は一切使用しておらず、100%天然成分からできており、環境に優しい材料だ。さらに、木や石はもちろんのこと、他の全ての構成材料も比較的安価であり、大量生産時のコスト安も期待できるという。この新素材単独では、水、機械的強度に少し弱いなどの課題があるものの、他の天然バイオマス系生分解性樹脂と複合化して、100%天然バイオマス成分を維持したまま、耐水性、機械的強度が向上することも確認済だという。